稀勢の里が引退して荒磯親方になったことで考える横綱の権威と国籍のこと

稀勢の里 引退会見 元力士

意固地で要領が悪くて休んでばっかりで全然勝てないという山のようなマイナス要素があっても、これほど心を揺さぶられた力士はいないと思った横綱稀勢の里が引退しました。

初場所が最後になるだろうと覚悟はしてましたが、いざそれが現実になると悲しいとも残念とも違う、ただただ切ない気持で胸がいっぱいで1月16日は1日中しくしく泣いてしまった。今でも思い出すと3秒で泣けます。

稀勢の里の横綱としてのありようは横綱の権威を汚したという批判があります。同時に稀勢の里を語るとき「日本出身横綱」というキーワードがほぼもれなくついてきます。

別の問題のようですが、実際は根っこで繋がる深い問題だと私は思っております。

※これはむちゃくちゃ主観的な意見です



日本国籍か外国籍か

2019年初場所6日目現在で関取衆の中には幕内7人十両6人の外国籍力士がいます。関取衆全体でみると5人に一人が外国籍です。これを多いと見るか大した数じゃないじゃんと思うかはそれぞれの価値観です。

外国籍力士の何がいけないのか

私個人としては遠くからはるばるやってきて身を粉にして相撲を取ってくれている外国籍の力士衆には、日本人でもなかなか馴染めない相撲世界を支えてくれてありがとうという感謝の気持ちがあります。

ただ、だからと言って土俵入でばんじゃいしている力士衆の6割7割が外国籍ってことになるとそれはちょっと…と思う。

これは相撲は日本古来のものだから日本人が守るべき!というような平べったい理由ではありません。現状だと外国籍のままでは引退後に角界に残れないため、指導者がどんどん減ってしまうからです。

外国籍で角界に残ること

何年か前に横綱白鵬がモンゴル籍のままで部屋持ちの師匠を目指そうとしたことがありました。白鵬はモンゴルの英雄の父親を持ち、モンゴル国で日本でいう国民栄誉賞のような賞をもらった際に大統領に「国籍変えちゃだめよ」と取れるような耳打ちをされてましたから、気持としては理解できます。

しかし協会は「外国籍のままじゃ認められません」と突っぱねました。白鵬は現在、日本国籍取得のための手続き中と聞きます。

これらのことから相撲協会あたま固い!と批判が出てたわけですが、私はやはり師匠として残るのであれば日本国籍であったほうがいいと考えます。

部屋持ち親方とビザ

外国籍の力士衆は興行ビザを使って日本に滞在し相撲を取っています。期限は最長3年で、部屋付のコーチとしてなら興行ビザで残れますし、ビザの種類を技能ビザに切り替えることが出来れば最長5年の在留資格が得られると思います。

ただし、コーチとして残ったとしてもそれは相撲協会の一員としてではありません。あくまで部屋に雇われる形になります。

外国籍である以上「在留資格」ってものを常に抱えているため、うっかり更新を忘れると資格失効になって国外退去になってしまいますし、親方は弟子の指導だけではなく相撲協会の運営にも携わることになりますが、それが持っているビザで出来ることの範疇にあるかどうかが不明確です。

師匠として部屋を「経営」していくためには、たぶん経営管理ビザが必要になります。ところが、経営管理ビザは組織を経営するためのビザなので弟子とは雇用関係になりますし、相撲の指導を主としてできるかどうかも不透明です。

まためったにあることではないでしょうが、テロや国際情勢によってビザの発給を止められてしまう可能性だってあります。その間に期限が切れて帰国しなくちゃならなくなるかもしれない。師匠が戻ってくる目処がいつまでもたたないと部屋を存続させるか否かの問題になります。

永住権じゃダメなの?

永住権は外国籍のままでビザの更新をすることなくずーーーっと日本にいられるビザです。横綱白鵬は2011年に取得済みです。

永住権を持っていれば就労の制限がなくなるし、相撲部屋建設にあたってローンも組めるのでこれで親方業やってもよかろうにと私は思うのですが、協会はこれまでの慣例を出してきて「年寄株取得には日本の国籍が必要」と言ってるんだろうなと。

ただまぁ、永住権と言えどもビザはビザなので、万一母国と戦争でも始まれば(一応日本は戦争をしない国ではあるけど)身柄を拘束されてしまうでしょうし、なにより「相撲は日本の国技」という鉄板のプライドが国籍条項緩和をさまたげているのでしょう。

年寄株と国籍問題はこの先もすったもんだすることが予想されます。いずれは解禁されるのかも知れませんが、今は日本国籍であったほうがやりたいことが出来るだろうなと思います。



日本人横綱という存在

歴代の横綱はみな、「横綱の辛さはなった者にしか分らない」と言いました。稀勢の里も引退会見の席上で「大関と横綱はまったく違ってました」と言ってましたね。

稀勢の里

いま、相撲協会には横綱経験のある親方が4人しかおらず、そのうち3人は10年以内に定年を迎えます。残り1人の元武蔵丸は健康不安があります。

1988年に引退した横綱双葉黒以降、6人の横綱が角界を去りました。そのうち3人が不祥事、3人は角界に見切りをつけました。全員が角界に残れていればまだ現役の親方として活躍できる年齢です。

親方衆の中に横綱経験者が少ないということは、新たに横綱になった力士の気持を理解して汲んでやれる人が少ないということです。

横綱朝青龍を皮切りに現行では角界に残る資格を持たないモンゴル国籍の横綱が5人続きました。国籍問題をクリアしない限り、現役時代にどれほど活躍しようともその後の土俵を支えられない人たち。

なんだかんだ言っても土俵を充実させるためにはそれを下支えする人たちが不可欠なのです。

日本は島国なので海を越えてやってくる人たちに対して身構えてしまうところがあります。野見宿禰の時代から続く日本の相撲は未だにちょんまげつけて着物着てとっても日本的なもので、横綱はその象徴です。

そういう純日本的な世界に身を置いてくれる外国人力士たちには感謝と敬意の気持を持ちますが、「骨をうずめる」という日本的な尺度で見れば、日本の象徴たる横綱が出来れば日本生れの日本人であって欲しい気持になるのも無理はないと思います。



コメント