史上初の無観客で開催されている大相撲春場所、12日目を終えた時点で大関貴景勝は勝ち越しリーチがかかっておりません。かなりピンチです。
昨年5月に昇進してから今場所で大関5場所目ですが、先場所は惜しくも14日目に優勝を逃したものの大関として初の2桁勝利を挙げました。
一人大関として迎えた春場所、どんだけ大暴れしてくれるかと思ったのになんということでしょう。
場所中に故障個所をさらに傷めた説も出ていますが、ただ、今場所の不調には精神的なものも少なからず関係していそうです。
落とせる星はひとつだけ
春場所も終盤に入りましたが、貴景勝の星勘定は12日終了時点で6勝6敗となっています。 カド番を回避するために許せる黒星はあとひとつしかありません。
12日目の対戦相手は比較的合口のいい竜電、これは突き落としで貴景勝が勝ちましたが13日目は調子を上げてきている横綱鶴竜戦が組まれました。今場所、大関獲りのかかる朝乃山と横綱白鵬とまだ当たっていません。
現時点で平幕に碧山が1敗で単独トップに立っていることから13日目以降の結果によっては割が崩される可能性もありますが、通常なら14日目に白鵬、千秋楽に朝乃山と当たることになります。
あと1つしか落とせない3日間に当たる顔ぶれとしてはかなりキツイ。
この1年貴景勝も横綱二人も休場がちだったため両横綱とあまり当たってきていないのですが、9日目かららしくない相撲で3連敗しているのを見ると、竜電に勝って連敗ストップしたとは言えファンの皆さまは気が気じゃない日が続きそうです。

貴景勝の不調はケガ?
さて、場所終盤になってからの貴景勝を見ていると足が出てないねぇと思う取組が目立ちます。
古傷の状態
貴景勝は新大関の昨年春場所で右ひざの内側側副靱帯損傷、同じ年の九月場所千秋楽の優勝決定戦で左の大胸筋の肉離れ(というと軽く聞こえるけど筋断裂)の大ケガをしています。

力士にケガはつきものです。みんな痛いところを騙しだまし土俵に上がっていますが、土俵に上がる限り完治することはありません。
日々の稽古で付けた筋肉は休んでいるとあっという間に落ちてしまいます。動かさないのが完治への道なのは分かってるけど、それをしたくても出来ないのがお相撲さんです。
貴景勝の右ひざと大胸筋も完全な状態ではないでしょうが、丁寧にケアしてなだめすかしながらコントロールできているように見えます。
新たなケガ?
今場所の貴景勝は場所前から違和感を持っていた左のひざを8日目の北勝富士戦で悪化させてしまったのではないか?と見られています。
確かに取組が終わって土俵を下がる時にあれ?と思いましたし、勝ち残りで座布団に座ろうとしたとき左の膝ががくがく痙攣していたのをNHKのカメラがとらえていました。
どこで傷めたんだろ?と思って8日目の取組動画を見返してみました。…うーん、明らかにここ!と分かるような部分は見当たらないのだけれど…。
その後3日黒星続きになってしまったのですが、一番気になったのは11日目の阿炎戦。以前も自滅しちゃったことがある立合いのもろ手突きも「?」だった上にまったく効いてるように見えず、阿炎の長い腕に翻弄され土俵際の『貴景勝スペシャル』こと左の突き落としも空振りで押し出されてしまいました。
なんかもう相撲の取り方を忘れちゃったんじゃないの?と思ってしまうほど、貴景勝らしくない負け方だったと思います。
…しかし、存在感発揮せねばならん大事な場所なのに、なんでこうもよく傷めるかねぇ。
荒磯親方がインタビューで「自分のあのケガの理由が引退して分かった。稽古のし過ぎだった。」と言ってました。筋肉を稽古で徹底的にいじめてきた結果、あの日あの時負荷に耐えられなくなってブチっと切れてしまったんだそうです。
この記事を読んだ時貴景勝の顔が頭に浮かんだのですが、やりこみ系の稽古をする貴景勝はこの記事を読んだでしょうか。
一人大関の貴景勝
去年カド番を落として関脇に陥落した栃ノ心が大関復帰特例の10勝を挙げて戻ってきた時、貴景勝は3人の先輩大関に囲まれていました。
それがひとり欠けふたり欠けして一人大関で迎えたこの春場所。貴景勝の性格を考えると、この状況は傍で見るより負担になっていそうです。
一人大関の重圧
大相撲の番付は、横綱は必ずしもいなくていいけど大関は必ず東西に一人以上置かなくてはならないという決まりがあります。
初場所限りで豪栄道が引退したため、貴景勝は1982年の琴風(現・尾車親方)以来38年ぶりの一人大関として土俵に上がっています。
この一人大関というのは、相撲を見る側からすれば他の大関が休場したために本場所に大関が一人しか土俵に立たない状態と大した違いはないように感じます。
大関という地位は下位には負けられず横綱が勝ちっぱなしになるのを阻止する筆頭の役目を担い、横綱がいなければ最高位として場所を締めなくてはならない見るとするとでは大違いの非常に苦労の多い立場です。
一人大関はその重さを同じ立場で分かち合う人がいないためより一層苦しいものです。
先場所横綱が相次いで休場して最高位になってしまった貴景勝は、優勝を逃したことで「大関の資格がない」とコメントしてました。
春場所を一人大関で迎えることが決まった時、貴景勝は大関としての責任感の強さから固くなるかも知れない、春場所は苦しいものになるだろうなぁと思ったものです。
案の定序盤からぼこぼこ負けて勝ち越しも危うい状況になってしまった貴景勝は千秋楽まで必死の土俵が続きますね…。
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